Sunday, March 12, 2006

『ニライカナイからの手紙』★★★☆

本当にやるべきことなのかどうかは謎だが、どうもやるべきことらしいことが
増えてくると、それに刃向かってブログとか更新したくなる、
そんな今日この頃です。
そゆときは、勝手にプチイベントを開催したくなるのも世の常です。

そんなわけで勝手に蒼井優オールナイトを開催。

一本目は買ったまま見事に放置していたDVDの山から発掘した

『ニライカナイからの手紙』★★★☆

ニライカナイからの手紙

沖縄竹富島で暮らす風希(蒼井優)と母(南果歩)。
6歳のとき風希を残し、母は東京へと行ってしまう。
それ以来ずっとおじい(平良進)と二人で竹富島に住む風希の心の支えは
誕生日に届く母からの手紙だった・・・

監督:熊澤尚人
出演:蒼井優、平良進、南果歩、金井勇太、 かわい瞳、比嘉愛未、斎藤歩、前田吟


沖縄モノと呼ばれるジャンルはもはや韓流並に定着したんじゃないだろうか?
何故ここまで沖縄、正確には沖縄の離島モノが持てはやされるかというと、
それは決まって人里離れたところにいって殺人事件に出くわしてしまう
金田一少年と同じ原理で、そこには現代の一般人から観れば現実的じゃない
ことが成立してしまうからに他ならない。
沖縄モノが優れているのは、現実離れしてはいるが、それが実在するらしい
という漠然とした地続きの期待感を観るモノに残していけることだ。
最も実在したとしてもその恩恵を授かることは実際にはほぼないんだけど。
でもそういうことが今もどうやらあるらしいというのが救いになる。
この辺が同じような現実逃避でも「ALWAYS三丁目の夕日」のような
ノスタルジー系と決定的に違う。

この作品でも従来の沖縄モノのツボを確実に抑えた構成になっており、
主人公が決定的に凹むシーンで、沖縄のあり得ない優しさが主人公を救う。
あのシーンは沖縄でなければ成立しない。
演出的にも”陽光”という印象の画面が終始続く。主人公が凹むシーン以外
はほとんど夜のシーンはなく、温かい光が差し込むシーンがやたらと多い。
こうした暖かみをこれでもかと重視した演出は、この映画の目的に
沿ったもので好感が持てた。

沖縄モノでありながら、もう一つの舞台となっている東京でもそれなりの
癒しを提供しているあたりも徹底している。最初ぶっきらぼうだった
元アシスタントが、なんだかんだいって主人公をサポートしてくれたりするなど、
都会でもちゃんと優しさはあるんだよという救いも一応提示している。
この辺は都会はただ冷たいモノという単純な対比構造が多かった
沖縄モノの中では、珍しいタッチだったかもしれない。

キャストも今や日本映画の隠れた顔になりつつある蒼井優の存在感は
申し分なく、平良進とか沖縄の人たちの演技なのか演技じゃないのか
わからないあの素っぽさも、沖縄映画ならではの味を確実に出している。

ここまで書いてきたことプラス母の無償の愛までもがセットでついてくるわけで、
この映画は泣ける癒し系沖縄映画という役割を、あらゆる面から
果たそうとしてくれている映画になっている。これだけ徹底的にやられると
もはや降参するより他ない。

蒼井優は、初単独主演作としてなかなかの映画をひいてこれたようだ。

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Tuesday, February 14, 2006

『パッチギ!』★★★☆

パッチギ ! スタンダード・エディション

舞台は1968年、京都。若者の恋と喧噪を軸にし、日本と朝鮮の問題を
交えつつ、そのエネルギーを見せつける青春映画。

監督:井筒和幸
出演:塩谷瞬 、高岡蒼佑 、沢尻エリカ 、楊原京子 、尾上寛之


途中までは何故この映画が映画賞を取りまくり、
沢尻エリカが新人賞を取りまくりなのか疑問で仕方がなかったが、
ラストシーンの沢尻エリカを観て、後者については合点がいった。
それまで映画の中で露出を控えていたのが、このシーンの為にあったのか
という定番といえば定番のやり方なんだけど、それをちゃんと実行できている。
全然好きじゃなかった井筒監督を見直した瞬間だった。

ただ作品として1位をあげるような作品かと言われれば首をかしげざるを得ない。
こういう題材をやるとそれだけで評価されるのかな?実際は安いロミオと
ジュリエットをやるためだけの舞台装置でしかないのに。

確かに青春映画にアクセントを加えたという意味では、
それらの要素はうまく働いていた。
キャスト・フォーククルセイダーズ・朝鮮問題と下地だけは実によくそろっている。
その上に作られたものは平凡であっても、準備は良くできている。
準備の段階で失敗している映画なんて死ぬほど
あるのだから、これは青春映画としてはなかなかの映画だとは思う。

井筒監督ははっきりいって好きじゃないが、この映画は他の井筒作品よりは
ずっと痛みが少なく、観るモノに優しい作品であることは間違いない。
この作品で井筒すげーなあと思った人は、過去の井筒作品を観てみれば、
僕の言っていることがわかると思う。
爽やかな想いに浸っていたいなら、もちろんやめたほうがいいけど。

僕としても沢尻エリカの好印象のまま、ここで記憶をクローズしたいので、
間違っても続編なんて作らないで欲しい。そもそもこの題材で2はあり得ないし、
勢いこそが武器である井筒映画に続編は無理だろう。
この映画はあくまで、準備が良くできていた映画だったのだということを
忘れてはならない。

まあ、でも本人がもうやるって言っちゃてるし、公開カレンダーにも
載っかっちゃってるからなあ。

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Sunday, August 21, 2005

『リンダ リンダ リンダ』(映画館)★★★☆

執筆中とか言いつつ、実態はもはや返済不能となった負債であり、
そんなものは余裕で踏み倒して、どんどん新しい映画を見続ける。
当然のように負債はさらに増えていくわけ。
昨今は半年でDVDになるんだし、その頃になったらサラッと書こうかなとは思う。
ビバ、後入れ先出し法で早速いってみようかい。やはりオススメしたい映画から
感想を書くとしよう。となると一発目は「リンダリンダリンダ」しかないな。


lindalindalinda


この映画、「スウィングガールズ」的なものなんだろうなあ~なんて思って
観に行くと、痛い目にあうかもしれない。同じ音楽映画だし、青春映画だし、
ライトなタッチだし・・・と要素要素は同じような枠組になるのだけど、
重点を置いている点、目的が違う。

「スウィングガールズ」は青春よりは音楽を中心として、爽快さを追求した
作品であった。JAZZという変わり種ジャンルをチョイスしている点、ラストに
向けて爽快感を重視して、起承転結を無理矢理なまでに構築している点などは、
まさに娯楽作としての目的を果たすべく作り上げられている。

一方「リンダリンダリンダ」は青春映画としての雰囲気に重点を置いた
作品である。高校生特有の青春要素満載で、徹夜でやってのける勢い、
取り留めもない時間を過ごすだるさ、地べたにあぐらで座り込む無防備さ、
他人のことを考えないちょっと残酷な無邪気さとか、そういったもんを
まとめてぎゅっと凝縮してある。
ブルーハーツがあまりにパワーがあるので、音楽映画としての要素も
結構あるのだけど、監督の演出意図としては、そこに重点が置かれていないことは
最後まで観ればわかる。
さらに娯楽作として完成させることも目的ではないため、文化祭の4日間を
ドキュメンタリーに近い形で、単に切り出しただけのような作りに
なっているようにも感じる。そんなわけで「スウィングガールズ」のような
明快な娯楽作品を望んで見に行ってしまうと、肩すかしを食うかもしれないと。
とはいえ過去の山下監督の作品と比べれば、かなり頑張って一般受けするラインに
到達しようという姿勢は見受けられた。

そんなわけで「リンダリンダリンダ」は青春映画なんだけど、
娯楽映画を意識した盛り上げはない。その割りにはライトな作りで、
登場人物の心情を掘り下げて、感情面から盛り上げていこうという意識もない。
だから、見終わった時なんかものたりねーな感があるのも事実。
でも、山下監督の特徴である長回しと台詞回しから生まれる自然体、
そこにエピソードを落とし込む観察力の鋭さによって、そういうことあるよね、
いや自分にはなかったかな的なスレスレのラインを飛行して楽しむことはできる。
あとからじわじわっときて、なんだかもう一回観てみたいなあと思う。
それが「リンダリンダリンダ」っていう映画なんではないかな。
たぶん誰もが1,2シーンはにんまりしてしまうシーンがあると思うよ。


監督/山下敦弘(くりいむレモン、リアリズムの宿、ばかのハコ船、どんてん生活)
脚本/向井康介、宮下和雅子、山下敦弘
撮影/池内義浩
音楽/ジェームズ・イハ
出演/ペ・ドゥナ、前田亜季、香椎由宇、関根史織、三村恭代、湯川潮音、山崎優子、甲本雅裕、松山ケンイチ、小林且弥、小出恵介、三浦哲郁、三浦誠己、りりィ、藤井かほり、浜上竜也、山本浩司、山本剛史、近藤公園、ピエール瀧
 
 
 
 
 
<以下付け足しのネタバレ雑感>
 
 
 
 
 
 
●「女子高生がブルーハーツ。 ボーカルは韓国からの留学生!?」

この宣伝文句はこの映画の本質をついているとはとても言えない。
じゃあ本質を突くようなキャッチが作れるのか?っていうとそれも違う。
青春映画の醍醐味ってのはその雰囲気にあるわけで、それは言葉で
表現できないこともないけど、言葉にすると凄く陳腐で、こっぱずかしい。
つまるところ青春映画の効用ってのは、こっぱずかしさを味わえることに
あるんだと思ってる。
山下監督は観察力のある監督なので、そうした雰囲気を構築するための、
ありそうありそうというシーンを作るのが実に上手い。
青春映画こそが山下監督の領域なんではないかなと僕は思っている。

過去作とは今回まるでイメージが違う作品であるなんて言われているけども、
「リアリズムの宿」だって、青春映画の一種であることに違いはないと思うし、
映像の手法、ネタのはさみ方などなど作風が大きく変わっている印象は全く受けない。
やはり今回も同じ手法で撮っている。大きく変わったことがあるとすれば、
それは女子たちが主役だってことだろう。

今回、感情面の掘り下げが足りないような気がするのは、女子たちが主人公
だったからじゃないかと勘ぐってみた。
監督は駄目人間(男)の描写はかなり上手い。たぶん監督自身が相当駄目人間
なんだろうなあと勝手に仲間意識さえ抱いているw
この映画でも山下監督は男を基本的に阿呆として描いている。
一方で女子たちは、男性的な視点で美化されているように思った。
都合の良い解釈がないと、映画として成立しなくなるので、そういうご都合主義は
僕としては大歓迎である。

●とりあえずペ・ドゥナいいね

どことなく感じられる野暮ったさ、天然っぽく魅せる技術、日本語がネイティブで
ないことなどなど、様々な点がこの作品に貢献してる。
パンフレットには脚本の決定稿が載っているのだが、そこから随分ペ・ドゥナの
キャラを活かして脚本が書き換えられていることがわかる。
校舎に忍び込むパンツ見えてるよ~のシーンや、体育館にいくまでの屋台を
すり抜けていくシーンなどがそれにあたる。
ペ・ドゥナを起用した経緯は時流やら、監督の思いつきやらのものなのだろうけど、
結果的に作品にアクセントを加えられたことは大きい。ペ・ドゥナがいなければ、
もっとのっぺりとした作品になっていただろう。
ペ・ドゥナ主演の「ほえる犬は噛まない」が良いらしいので、今度是非観てみたい。

●本職の方々、関根史織&湯川潮音&山崎優子

まず関根史織が良かった。「こういう時のことって忘れないからね」と
「ニンニク一個」のシーンはかなり好き。これに関しては関根史織の演じた望の
キャラが、僕好みだったってことも大いにあるんだろうし、ああいうボソボソキャラ
を演出するのが山下監督が上手いってのもあるだろう。でも、あのキャラの
雰囲気を出せるルックスってことでナイスキャスティングであったと思う。
ベースなんてやってる奴はああでなくてはならん。
(一方でどうやっても華がある香椎由宇の演出には苦労しているように見えた。
その結果があの異常なまでの夢シーンとさえ思えてくる)
湯川潮音と山崎優子はこういう人がいるからこういう役を作ったのか、こういう役
があるからこういう人を探したのか、どっちかわからないような作りで、最後の繋ぎ
のステージやら漫画喫茶やらで、作品にアクセントを加えてくれた。
湯川潮音は東京少女少年合唱団のソプラノ出身で、山崎優子は
池袋のジャニス・ジョップリンと称されてるらしい。

●せっかくなので前田亜季&香椎由宇

前田亜季はやっぱかわいいね。いや、それだけですwスマン
自宅でのドラム練習眼鏡シーンに悶絶した人多数らしい・・・
いつものようにだんだんとどーでもいい内容になっていきます。
香椎はどさくさに紛れて前項で書いたので省略・・・
「ローレライ」よりは良かったんじゃね。
サントラCD収録の「リンダリンダ」のコーラスが香椎なの?ってぐらい声が
キュートなので、萌える人が多数らしいwスマン

確かに結構良かったりするサントラ↓
映画「リンダ リンダ リンダ」オリジナル・サウンドトラック

結局最後は萌えの話なんだね。マッタクモウ。

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Tuesday, February 08, 2005

『レイクサイドマーダーケース』(映画館)★★★☆

『レイクサイドマーダーケース』★★★☆

lakesidehanken

もうほとんど打ち切りでやってない(-.-;)
明日、明後日で終わりかな。
書くのが遅すぎたのもあるんだけど、公開2週でほとんど終わっては
どうしようもない。それでもDVDで観る人もいるだろうし、
ミステリーがネタバレすることほど最悪なこともないので控えめに。
出来は突き抜けたモノはないけど、なかなか良い。
思った以上に監督の色が出てない作品になっていて、
よく言えば見やすい作品になっている。
一応R-15指定なので、グロいといえばグロいし、昨今のホラーブームの
影響なのかちょっとそうした描写もありなので、苦手な人は注意が必要。
僕は結構苦手な人で、未だに「着信アリ」がほったらかしになっているけど、
これはなんとか大丈夫だった。

フジが制作している割には公開規模小さいよな。
これを書いてる2/8の時点でほとんどが公開終了。
2週間で終わるような出来ではないし、キャストもそれなりに豪華。
だいたいもっと短期間で打ち切ってもいい映画はごろごろしてるだろうに。
ローレライとか踊るばっか宣伝してないでさぁ、もう少しこっちも
手をかけてあげてほしいよ。

監督/青山真治(ユリイカHelpless月の砂漠
脚本/青山真治、深沢正樹
原作/東野圭吾「レイクサイド
撮影/たむらまさき(美しい夏 キリシマ)、池内義浩
音楽/長嶌寛幸(銀のエンゼル)
出演/役所広司、薬師丸ひろ子、柄本明、鶴見辰吾、杉田かおる、黒田福美、眞野裕子、豊川悦司、牧野有紗、村田将平、馬場誠
 
 
 
 
 
<以下ネタバレ>
 
 
 
 
 
●”ミステリー”としてのレイクサイドマーダーケース

ミステリーとしてよくできていたか?というと、ちょっと期待ハズレ
だったといえるかもしれない。特に東野圭吾といえばどんでん返し度満点の
ミステリーが多いわけで、この程度の謎解きでは物足りないと感じる。
伏線だとか謎解きの質もいま一つだったし、役所が疑問を感じていくステップ
の描き方もおざなりでだった。

それでも真相がわかったときに、それまでの登場人物の行動の不自然さ
が氷解するあたりはカタルシスがあるし、全体的にみればそれなりの出来で
あったと思う。ミステリー邦画は破綻率が高いだけにレアだし。
もっとも犯行理由が明確にならず、かばった理由がピークに据えられていること
が示す通り、この映画の軸はミステリーではないと考えても良いと思う。

●”ホラー”としてのレイクサイドマーダーケース

「着信アリ2」だの、ホラーの予告しか流れなかったのは、客層が
被ってるってことなんだろうか。単にR15指定だからってことかもしれんけど。
確かに最後のシーンや、死体を処理するシーンなどホラーっぽいシーンは
いくつかあった。死体を処理するシーンなどは音だけでもそれなりにグロい。
柄本明の怪演ぶりも光った。
映像の質も全体的に冷たさと暗さを意識していて、そうした点も
ホラーっぽさを増していた。あとは子供の不気味さと薬師丸の謎の能力。
でも、どうしても最後のシーンの効果がホラーとしても、
暗喩する映像としても今ひとつピンとこない。ホラーがメインの効果では
なくて冒頭のシーンとのリンクするというのはわかるのだけど、
やや投げっぱなしな気がした。

●”社会派人間ドラマ”としてのレイクサイドマーダーケース

この映画の軸はやはりこの部分になるんだろうなと。
サスペンスとしてはネタばらしのあとのシーンが長すぎるわけで、
ストーリーとしてはこっちが軸だという意識で作っていたのだと思う。
森の中のシーンで吐露される大人、親の抱えるエゴはさして斬新なもの
でもないけど、笑い飛ばせるような軽いものではない。
実際同じ状態になったらどうするかと考えるのと共に、
子供の視点としても身に覚えが少なからずあったので、あのシーンは重く響いた。

この森の中でのシーンは、途中通り過ぎる車のライトを見つめるシーンなど、
演出も概ね満足していた。しかしこのあとの2シーンには不満がある。
役所、薬師丸の別荘にもどってからのやりとりと、例の湖のCGシーンである。
役所、薬師丸の会話シーンははっきりいって軽すぎた。
このシーンは入れたからには、この映画をグッと引き締めるシーンで
なければならなかった。これから背負っていくものの重みをここで表現できるか
どうかは、映画の後味を決定付けるものであったはず。ここがしっかりして
いないから、最後の湖の死体描写も、看過しづらい。

●抑えられた青山監督らしさ

この前観た大林監督の「理由」といい、ミステリーを撮らせるとあらすじを
しっかり表現しようとするせいなのか、監督の特徴が押さえ気味になる
傾向があるのかもしれない。
とはいえ演出面では暗い色調、蝶の死骸と血液の粘着質をリンク
させたりと、TVドラマではなく映画なんだぞという部分を見せてくれた。
別荘のセット、内部の撮影シーンも概ね良かった。

しかし、おそらく青山監督らしさが一番出ていたのは”魔女”の設定
なのだろう。僕は観ている時には気づかず、パンフの情報で知ったのだけど、
パンフの冒頭にいれるぐらいなのだから、結構監督としては一番
盛り込みたかった内容なのかもしれない。
実は薬師丸と眞野は魔女という設定で、役所が光に過敏であることも
それとの対比であるみたいなことらしい。
書いていて僕もよくわかってないんだけど(^^;
良く聞いていると序盤にドノヴァン「魔女の季節」も流れていたらしい。
この辺のことがしっかり理解できたという方、是非コメントください。

●余談-お受験-

こんなステレオタイプな”お受験”描写はやはり好きではないです。
お受験やったからって「光る眼」チックな子供が量産されるなんてことは
当然ありません。ただ、この作品に限っていうならば、ステレオタイプな
描写をあえてすることで、親たちの醜さや滑稽さを引き立たせる効果が
あったことは確かです。
またなんだかんだいっても、ステレオタイプと呼ばれる描写は誇張の
塊みたいなものではあるけど、あたっている部分も少なからずあるわけで。

お受験をネタにした映画、ドラマは今までにも何本か観てきた。
この映画と同じように子供が犯人であるとしたドラマに「QUIZ」と
いうのが数年前にあった。この「QUIZ」と比べると、「レイクサイド
マーダーケース」では小学生の描き方が少し違う。
最大の違いは子供の犯行動機である。「QUIZ」では子供たちは
大人達に警鐘を鳴らすために犯罪を犯しており、まだ大人に絶望は
していなかったが、「レイクサイドマーダーケース」では大人に対して
絶望を通り越して、もはや踏み台ぐらいにしか考えていないようにも思える。
単純に比べることに意味がないのはわかっているけど、
諦めムードが昔より濃くなっていることが、こうした描写の変化を
生みだしているような気がしてならない。子供は理解できないと。

そういえば先週の「富豪刑事(4話)」の犯人の子供も、自分の中学受験の
弊害にならないようにするために、親の犯行をより完璧にしようと
自らの意志で犯罪に加担していた。不気味で狡猾であるというある意味
最大級の誇張した描き方でも、それで枠の中に規定することはできるし、
安心感もあるのかもしれない。いつだって現実はそれを上回って来て、
戸惑うことになるんだけど。

ちなみに年々中学受験する人は増えており、今や都内じゃ6人に1人は
お受験しちゃうそうです。ゆとりの教育がさらにお受験する人を増やして
しまうとはね。「やべっ、俺ゆとりの教育世代だからお受験して、少しでも
まともな中学行かなきゃ!」って子供が増えてるってことにでもしておくか。

※「QUIZ
財前直見主演。今をときめく神木隆之介も大活躍。
放送中に高二の少年が電車内で寝ていた乗客をハンマーで殴って大怪我
させ、事前に犯行を予告する手紙を劇中と同じ文体で警視庁、TBSに送付
していたことがわかって一騒動あったことでも有名。

●原作を読み終え追記(原作ネタバレあり)

レイクサイド 新装版

原作のウエイトはミステリー>社会派人間ドラマだった。
「g@me」の原作もそうだったんだけど、東野圭吾の中では
軽いタッチの作品に入り、分量も多くない。
原作は主人公が疑問を持ち、真相に近づいていく過程が、
映画よりは流石にしっかりしている。
映画でのウエイトの変化は青山監督のやり方ということなのだろう。
子供を総体的に捉え、不気味で均質的なものであるという描写をし、
親から観た子供という視点を強調した。また、豊川悦司に原作にはない
「ただ悲しいだけ」という台詞を言わせることで、子供側の言い分を
盛り込んでいる。これも結局は大人の視点の言い分だし、下手すると
安っぽい印象を与えかねないが、青山監督が脚色した要素としては
肝の部分に当たるのだろう。

また子供側の動機が小説の方がより子供の利己的なもの
として提示されており、映画のようにひょっとしたら面白半分で、
受験のストレスで犯行に及んだのでは?という要素はほとんど
見られない。映画の描写の方が幅を持たせて現実性を
持たせようとはしているとも言えるけど、結果的に逃げに
見えてしまった気もする。

あと原作では子供誰か一人の単独犯がほぼ確定している。
映画では複数犯の可能性が提示されており、犯行形態、
子供の描写の仕方を考えれば、複数だと考えるのが自然な
作りになっている。
これは子供を原作より総体的に捉えるというタッチの変更に
対してはよく機能していたが、結果的に二つ目の犯行動機である
俊介の息子(映画では娘に変更)が家庭崩壊を防ぐために、
愛人を殺したという線を消してしまった。
これが消えたことは俊介が共犯として、自分もこの犯罪を
乗り越えていくと決意した大きな理由が消失したことでもあり、
映画のラストの弱さにも繋がってしまっていたことは否めない。

ちなみに薬師丸ひろ子の未来が見える能力はやはり原作にはなかった。
これから起こる事件の予見と、娘の未来の描写は上記の設定変更の
歪み埋める為に用意したものだったのかもしれない。


■違う視点の記事(リンク)

『レイクサイド・マーダーケース』の水中死体Days of Books, Films & Jazz
水中死体という描写を中心に、演出面からの評価。
青山監督の上手さがどこにあるかよくわかる。
眞野裕子はホントいい仕事してた。美味しい仕事かどうかはともかく・・・
かわいそうな、おとうさんたちの、おはなしハナログ
マチズムという視点からの、映画の傾向。
そもそも主人公が浮気するからこういうことになんだろうが!
でも最後はなんだか悲劇の主人公的ではある。俺頑張って親になります。
小説ではここがそれなりにフォローされてるんだけどねぇ・・・
映画 「レイクサイド マーダーケース」映画をめぐる怠惰な日常
やる気のないブロックブッキングが限りなく最悪の形で露わになるとき。
宣伝戦略でここ数年映画当て続けてきた東宝&フジが、穴埋めで使ったと
言われても仕方があるまい・・・これでローレライがクソだったら僕は切れる。
『レイクサイドマ―ダ―ケ―ス』鑑賞★ミルクココアの映画大好き!★
金八、Wの悲劇、こうしたギミックは僕の世代にはちと厳しい。
いや金八は再放送で何度も観たのでわかるんですけどね。
「光」「魔女」のことについて書かれてます。やっぱりパンフは買わないと駄目?
「魔女」はパンフ読まないとわからないし、「光」はついつい役所のだけが
目立つので、ミステリーの伏線だと勘違いしてしまいがち。
レイクサイド マーダーケースLes Étrangers du Bois de Boulogne
フィクションと現実の映画というルールの中での関係性。
フィクションとは現実を表現しやすくするための道具。
現実が現実を越えてくるから、混乱してしまうけど。

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Wednesday, December 22, 2004

『恋文日和』(映画館)★★★☆

なんだってこんな時期にこんな映画を観に行っているのか
もう訳が分からないんだけど、年明けじゃレイトショーになりそうなので、
仕方なしに先手を打つ。カップルで観にきていた人いなかったけどね、実際。
女二人組とかばっか。玉山にお熱なようだった。
僕はちなみに大森美香目当て。

『恋文日和』★★★☆

koibumibiyori

ラブレターを題材にした4監督による4作品のアンサンブルムービー。
4本それぞれ雰囲気の異なった作品に仕上がっており、この手の話し
が好きな人には良いだろうし、そうでない人も1本ぐらいは気に入る作品
がある可能性は高い。4本のバランスも悪くなく、それなりにまとまっている。
野郎一人で観に行っても全然面白い作品に仕上がっている・・・・・とは思う(笑)

監督/大森美香  「あたしをしらないキミへ」
    須賀大観  「雪に咲く花」
    永田琴恵  「イカルスの恋人たち」
    高成麻畝子  「便せん日和」
脚本/大森美香  「あたしをしらないキミへ」
    佐藤善木  「雪に咲く花」
    松田裕子  「イカルスの恋人たち」
    岡本貴也  「便せん日和」
原作/ジョージ朝倉  『恋文日和』
撮影/福本淳
出演/村川絵梨、弓削智久、真木よう子「あたしをしらないキミへ」
    小松彩夏、田中圭、田中要次「雪に咲く花」
    玉山鉄二、塚本高史、當山奈央「イカルスの恋人たち」
    中越典子、大倉孝二、森ほさち「便せん日和」
 
 
 
 
 
<以下ややネタバレだけど、まあ大丈夫か>
 
 
 
 
 
●4作品のバランス。

3本の原作付き作品をオリジナル作品「便せん日和」を
4分割して挟み込むという構成は絶妙のバランスだった。
もし3本をただ順番に流していたならば、映画全体のテンポに問題が
生じていただろう。「便せん日和」は単体で観ると、他に比べて
チープさがある作品だが、間に30分程度の作品を挟んで、4分割しても
無理なく理解できる程度の話、しかも他の作品の邪魔をしないように
意図的に作家性を押さえ、展開もベタである必要があったのだから仕方がない。
ブリッジ役としては必要十分な役割を果たしていた。
中越典子というキャスティングはそういう意味ではベストではあるのだが、
中越典子的にはあまり美味しくないお話だった。

それぞれの作風のバランスも良く取れていて、爽やか青春話、はかない話、
切ない話、暖かみのある話とバリエーション豊富だった。

●オススメは「あたしを知らないキミへ」

大森美香監督の「あたしを知らないキミへ」を推してみる。
大森美香が脚本を書いているらしい・・・という情報だけで観に行ったので、
どれを大森美香が担当しているのかは全く知らなかったのだが、
観たらすぐにわかった。台詞回し、特に台詞の間はいかにも大森さんらしさが
全開だし、4作中一番明るい作品ということもあり、それがまたわかりやすかった。
大森さんがシリアスなラブストーリーやるとどんなのが出来るのかという
興味もあるが、それはまた別の機会に期待しよう。

(大森美香って誰よという人の為に説明しておくと、大森さんはドラマ脚本家
で、「カバチタレ!」「ランチの女王」「お見合い放浪記」「ニコニコ日記」
などのコメディタッチの会話劇を得意とする。また基本的に女性主人公
の脚本しか書かない人である。次クールは「不機嫌なジーン」で月9登板予定)

「あたしを知らないキミへ」はキャストも魅力的。
ヒロイン村川絵梨は「ロード88」で主演するなど、アミューズが映画方面で
売り出そうと画策してるアイドル。なにやらBOYSTYLEとかいう関西の4人組
アイドルグループのダンサーらしいが、流石に西の事情までは僕の所にも
届いてない(笑)
そんな裏事情が見え隠れはするのだが、この「あたしを知らないキミへ」
のヒロインに要求される”平凡でありながらかわいげがあるヒロイン”
にははまっている。相手役の弓削智久もビジュアル面では完璧な配役
であったと思う。この題材は無名だけどキラリとするものがある役者で
やってこそ意味があるものであり、今回のようなオムニバス形式
じゃないと実現不可能な作品であるわけで、映画の存在意義としても
この作品を一番推したい。

●撮影、福本淳 照明、市川徳充

全作品がこのコンビで撮られている。これが映画をテーマ性だけでなく、
ビジュアル面からも統一感を出すことに一役かっている。
このコンビは篠田昇の弟子にあたる人で、現在行定組で活躍中。
今後の活躍にさらに期待したい。

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Thursday, December 09, 2004

『父と暮せば』(映画館)★★★☆

岩波ホール初見参。
二度と行くことはないかもしれんけど。
お土地柄、映画の内容もあり、ぶっちぎりの最年少でした。


『父と暮せば』★★★☆

chichito.jpg

「美しい夏キリシマ」などの反戦映画を多く手掛けてきた黒木和雄監督作品。
原作は井上ひさしの舞台劇。
原爆投下から三年後の広島を舞台とした宮沢りえと原田芳雄の実質二人芝居。

反戦映画にしてはスマートな作品。
良い役者が良い演技をし、脚本もユーモアがあり、ファンタジーがあり、
親子の想いという普遍的要素も盛り込まれている。
戦争そのものを題材としているのではなく、その後の話しを題材としている
ことも戦争という事象そのもので訴えるのではなく、心情から訴える
というスタイルで僕好みでもある。
しかしあくまでも反戦映画にしてはスマートなだけで、重苦しい部分は当然あるし、
テンポが良いなどとはお世辞にもいえたものではない。
でも、こういう映画もたまには観ておいた方がいい。

反戦映画は作った側が見せたい人にはなかなか観てもらえない。
反戦映画らしくなればなるほど客は寄りつかなくなり、
見に来る客は既に反戦映画だと知って見に来るような客なのだから、
作った側が真に見せたい人ではない。
この映画も実際に見に来ていたのはやはりシニアの人ばかりだった。
今後学校とかで強制的に見せる映画としてチョイスされるようになれば
いいんだけど。映画としての完成度もなかなかだから邦画布教にもなるし。


監督/黒木和雄
脚本/黒木和雄、池田眞也
原作/井上ひさし「父と暮せば」
撮影/鈴木達夫
出演/宮沢りえ、原田芳雄、浅野忠信
 
 
 
 
 
<以下ネタバレのつもりはなかったが、結局ネタバレ>
 
 
 
 
 


多くの反戦映画は戦争の悲惨さをリアルな表現で伝えることに主眼を置きすぎる。
戦争そのものを描いてドカン!ドカン!グサッ!えーん!みたいな映画は
見ているときに受ける印象は強いが、後味が悪いことも多いし、内容も単純化
されやすい。こうした静かに心情メインで、あれやこれやと手法を尽くして
戦争を描いた作品の方が印象にも残りやすいし、僕はこういうタイプの方が
ずっと好きだ。

死んだオヤジが応援団長として降臨してくれるファンタジーがあるのもいい。
最近ではPTSDなんて横文字が良く聞かれるようになったが、
そんな言葉もない時代に、PTSDとかいうのもはばかられるぐらいのこと、
”生き残ることの方が不自然”と言われることがあったのだと。
そんなとんでもない事態から、自分一人でなんとか立ち上がれるのは
一部の人間だけで、世の多くの弱者達は抜け出せない渦へと引きずり込まれて、
そのまま終わってしまう。
世の弱者の一人として、僕もこういうファンタジーは好きだ。
とはいえ最近やたら生き残った人を救済するために、死んだ人が
一時的に生き返ったりする映画が多すぎる気もする。
あんまり弱者を甘やかしすぎるのも良くないとか一応言っておく。
好評だからといって、脚本の困ったときの逃げ場として濫用されるのも考えものだし。

おおむね良い出来のこの映画で気になったのはCG描写部分。
こんな邦画にまでCGがお手軽に導入されるようになったのかと感心する反面、
決して完成度が高いとは言えないCGの描写ということもあり、
本当に必要だから入れているのか?という疑問が残った。
挿入されたCGはほぼ原爆被害描写であった。舞台が原作、二人芝居、
しかも一つのセットでほとんどの話しが進んでいくという、あまりに映画的
ではない内容なので、CGを使って映画らしさを出そうとしていたのかもしれないが、
演技合戦出来るレベルのキャストをした時点で、舞台っぽさをむしろ強調
していても、舞台的な映画として十分良い出来になっていたはず。
CGと同じように使われていた人形、地蔵、絵画を使った描写だけでも
十分に映画らしさも、原爆被害も伝えられていたと思えるだけに、
やはり決して良い出来とは言えないCG描写はいらなかったと考える。

最後に相変わらずほっそりすぎな宮沢りえ。この映画的には抜群にマッチしてる。
そろそろ幸せそうなキャラでも観てみたい。今出演中のドラマ
「一番大切な人は誰ですか?」のようなキャラクターをスクリーンでも是非。

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