Sunday, January 09, 2005

『理由』(映画館)★★★★

全日で上映するのは今週までだと聞いていたので、
体調悪いのに新宿武蔵野館まで遠征。
そしたら好評らしく二週間全日興行が伸びてた_| ̄|○
本当に盛況らしく、僕が観た回は最前列まで埋まっていたのでほぼ満席。
100席ないとはいえ、「インストール」なんかよりは全然入ってるわけで、
”宣伝不足だから流行ってない”は言い訳でしかないと痛感させられた。

『理由』★★★★

riyuu

「模倣犯」には多くの宮部ファンがその出来に絶望したはずだ。
今回はさらに映画化が困難だと思われていた「理由」。
「模倣犯」で痛い目をみた人は思わず後ずさりしたくなるだろう。
しかし、そんな人にこそ観てほしい映画。
長編ミステリーを原作にした映画で、ここまで原作の雰囲気を
崩すことなく完成された作品は見たことがない。
あの600ページを越える原作をよくぞここまでまとめあげたと
ただただ感心する。2時間40分は決して長くない。

僕としてはかなりオススメしたいのだが、どうも評価ははっきりと
分かれている模様。特に僕の感想は完全に原作読んでから映画を
観た人間の感想なので、原作未読の人がこの映画をどう感じる
のかはわからない。でも、そういう人の感想を一番聞いてみたい。

なお所謂大林節はかなり押さえられている。
●女が脱いだりはしませんので、あしからず。

監督/大林宣彦
脚本/大林宣彦、石森史郎
原作/宮部みゆき  『理由
撮影/加藤雄大
音楽/山下康介、學草太郎
出演/村田雄浩、寺島咲、岸部一徳、大和田伸也、久本雅美、宝生舞、松田美由紀、赤座美代子、風吹ジュン、山田辰夫、渡辺裕之、柄本明、渡辺えり子、菅井きん、小林聡美、古手川祐子、加瀬亮、厚木拓郎、左時枝、 細山田隆人、ベンガル、伊藤歩、立川談志、南田洋子、石橋蓮司、麿赤兒、小林稔侍、宮崎将、宮崎あおい、永六輔、勝野洋、片岡鶴太郎、根岸季衣、入江若葉、嶋田久作、峰岸徹、裕木奈江、中江有里
 
 
 
 
 
<以下ネタバレ、あの歌が耳から離れない((( ;゚Д゚)))>

 
 
 
 
●原作を読んでいるかのような感覚

原作の雰囲気をいかに再現するかに重点が置かれていた。
だからルポルタージュ形式は外せなかったし、600ページの原作を
表現するのに160分かかった。160分でも短すぎるぐらいで、
この点に関しては160分によくまとめたなと思う。
映画を観ていた時は、それほど原作のエピソードを飛ばしているとは
感じなかった。元々ミステリー部分より、人間描写がメインの作品で
あったことが良かったのかもしれない。ストーリー的な無理が生じにくく、
いかに作風を活かした脚本作りをするかということに注力できていた。
照明の使い方など、背景等々画の方も過剰に作りこんでいて、
そうしたもの全てがあの原作のギスギスした感じや、なんとも
言えない不快感を見事に表現していたと思う。

●107人のキャスティングの妙

「理由」の特徴はルポルタージュ形式で、登場人物が非常に多く、
特定の主役が存在しないことにある。
小説の場合は文章によって綴られることもあり、ルポルタージュ形式
であることが一番目立つが、映画は映像であり、小説よりは形式が
限られる為、特定の主役が存在せず、登場人物が107人もいること
の方が目立つ。
この映画ではこの難題を、107人をある程度有名な役者で
揃えてしまうという荒技で乗り切っている。
そして、このキャスティングこそがこの映画の成功を支えている。

これについて大林監督は
 「小説では名前という記号があるから、混乱しても何ページか
 前に戻って確かめればいいが、映画では一気に通過してしまう。
 記号性をどこに見出すかというと、結局、俳優さんの顔。
 顔が記号になるといえば著名なスターしかない。
 今の映画観客というのは、ギャラの高い低いで役を
 判断しちゃう能力があるから、台詞ひとつない役でもちゃんとした
 スターを使わなきゃならなかった。」
といっている。

実際、字幕で名前を表示するなどといった演出的配慮もされていたし、
一度登場した人物が、再び出てくる時もわかりやすくしようという配慮
が感じられた。そうしたこともあって、キャスティングで観客に登場人物
を識別させるということは成功していたと思う。ただ僕は邦画オタクであり、
伊藤歩や加瀬亮は超メジャーだぐらいの勘違いはしているので、
他の人がどう感じるかははっきりいってわからない(笑)
ただ、このキャスティングは識別性だけでなく、意味性をしっかり
持っていたと思うし、これこそがこの映画の肝であると思っている。
つまり、所謂ハマリ役というのを逆手にとって、ビジュアルだけで
その人物の人間性までも表現してしまうことに成功していた。
原作はたくさんの人物像を様々な文章テクニックによって描き出すことに
よって人間の性質を浮きだたせていく作品であり、それこそが肝だった。
それをこういった形で表現したのは素晴らしいと思う。
出てくる役者がほぼノーメイクというのも、そうした表現を助けていた。

なかでも僕が気に入ったキャスティングは小糸信治役の山田辰夫
と小糸貴子役の赤座美代子。観た瞬間、人間の小ささがにじみ出てる
小糸信治っぷりと、元教師で変な気難しさを持った小糸貴子を見事に
表現していた。
またいくら107人横並び扱いとはいえ、出番が多い、もしくは物語上
重要なな人物はいるわけで、岸部一徳(マンション管理人)、
伊藤歩(宝井綾子)といったところが、物語の下支えになっていたことも
大きかった。

●長編ミステリーの映画化に対する一つの解答

今までこの手の長編ミステリーを映画化する場合、
まず2時間程度に収めるために、登場人物が削られ、エピソードが
削られまくった。それによって物語の整合性が保てなくなりだし、
作品の特色も薄れてきたところに、さらに映画オリジナルの要素
を無理矢理入れて破綻。
こうした映画は原作を読んだ人から物足りないとかダイジェスト版と言われ、
原作を読んだことがない人からはよくわからなかったと一蹴されてきた。

今回の理由の映画化はそれに対する一つの解答だと思う。
1.2時間枠にこだわらない。
2.原作の特徴は出来るだけそのまま踏襲。
3.映画オリジナルの要素は極力排除。原作の軸となる部分を注意深く抽出。
4.キャスティングそのものによって物語を補う。

特に原作に忠実であるという部分はかなり徹底されており、
原作を積極的に変えたと思われる部分としては石田直澄の
キャラクターと八代祐司の描き方ぐらいだろう。
石田直澄の変更に関しては、ラストに多少映画的感動を
差し挟む為に悪くなかったと思うし、限られた時間で逃亡動機に
説得力を出すのにも有効に働いていた。八代祐司に関しては次項にて。

●それでもやっぱり出てしまった大林節

とまあ原作に忠実であることはかなり徹底しているのだが、
ラスト付近で色気が出始める。監督自身が画面に出てきてしまい、
さらに八代祐司の幽霊を変なCGで表現してしまう。
そしてトドメが最後に流れる”殺人事件が結ぶ絆”の歌。
これさえなければ、もう文句なしの黒子に徹した職人芸だったんだが、
それではガマンできなかったんだろうか。

監督としてはまず原作通りの時代設定でやりたかったらしい。
詳しくはオフィシャルHPを読めばわかるが、「理由」は1996年の
作品であり、マンションバブル等々その時代が強く反映されている。
またルポルタージュ形式で新聞連載で発表されたことも重要視して
いるようで、映画もジャーナリズムの一部なのだから、時代性は
反映しなくてはならないと考えたらしい。
というわけでそれが監督の出演という形のネタばらしになったと(笑)
他にやり方いくらでもありそうなもんだが・・・・

幽霊の変なCGも時代性を反映させたひとつの結果なのだとは思う。
原作が発表された頃には、まだ八代祐司の犯行動機の不透明で
ある種短絡的な部分は珍しさがあったが、今ではそうでもない。
だから変なCG幽霊でも追加して、不気味にしとこうと。
この部分は原作でも印象的な、ラストの小糸孝弘の問いかけを
もっと有効に活かしたほうが良かったのではないかと思う。
八代祐司の不気味さをホラー風味で片づけてしまうのは納得できない。

そして最後の”殺人事件が結ぶ絆”の歌。これについてはナンセンスすぎて
僕にはさっぱり意図が理解できなかった。八代祐司の幽霊に引き続き
ホラー色で最後押し切ったのかとも思ったが、何かしら他の見解があるという
方は是非教えてください(^^;

ていうか大林節でしょ。_| ̄|○

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Tuesday, October 26, 2004

『お父さんのバックドロップ』(映画館)★★★★

『お父さんのバックドロップ』★★★★

心地よく流れる親子の物語。
脚本の原作アレンジもなかなかだし、監督も初監督作品としては
丁寧に作っており、十分頑張ったと思う。cobaの音楽、スネオヘアーの
主題歌も良かった。キャストは神木&田中の子役コンビが絶妙。
宇梶のこの映画にかける気迫も十分伝わってくるし、南方英二
のコメディリリーフ、南果歩、生瀬勝久の芸達者ぶりも堪能できる。
また中島らもも出演しており、泣ける。

ベタな話しではあるけど、それを感じさせない技が多く使われているし、
こういうストレートな作品は、邦画にもともと少なく、まともな作品も少ない。
邦画にだってこういうシンプルでいい作品があるってことを、
みんなに知って欲しい。でも、全国で数館しかやってないからな・・・
評価★4つはやや甘い感じだけど、神木隆之介の実質主演作であり、
神木隆之介というスーパー子役の金字塔になること間違いなし
の作品ということで、ちょっとボーナスをつけての★4つ。


監督:李闘士男
脚本:鄭義信(OUT刑務所の中愛を乞うひと
原作:中島らも 『お父さんのバックドロップ
撮影:金谷宏二
キャスト:宇梶剛士、神木隆之介、南果歩、奥貫薫、コング桑田、荒谷清水、AKIRA、田中優貴、エヴェルトン・テイシェイラ、コング桑田、荒谷清水、磯部清次、中島らも、笑福亭鶴瓶、筒井真理子、南方英二、生瀬勝久 
 


 
 
 
(以下ネタバレあり)

cineamuse.jpg

見に行ったのは先週の水曜日。写真わかりにくいけど、
かなりやばいぐらいの雨が降ってました。
台風直撃ですのんよ。そんな日でも見に行ったのは、
シネアミューズは神なので、水曜は男も1000円だから。
全国の映画館よ、見習え!!

そんなわけでバックドロップパパを観てきたわけですけど、
ベタながら良かった。ていうかマジ泣いた。

正直ベタもベタなんだけど、それをうまい具合にフィルムになじませる
努力をしてる。だから最後ついつい素直に涙腺がゆるんでしまう。
例えば原作とは違う関西という設定。関西なら人情モノもなじむし、
ベタも許される空気が生まれる。
さらにこの関西設定を活かして、関西に引っ越してきたのに、
標準語をしゃべり続ける神木隆之介という設定で、神木のキャラに
奥行きを持たせたのも秀逸。最後の最後でこれがまたピリリと
聞いてきて、親子だけではなく、少年たちの物語という原作にない
要素を盛り込み、映画としての魅力をワンランク高めることに成功している。
あとはやはり1980年という時代設定。
現代ではこういうストレートな話はもはや成立しなくなってきている。
ベタという名のフィクションを全く受け付けようとはしない。
1980年、聖子ちゃんカットやらテクノカットが流行していた時代。
今の時代から見て、「リアル」を感じ取れない時代設定が必要になってきているらしい。

キャストも素晴らしい。特に子役コンビ。
透明感溢れる都会的神木隆之介と、関西弁を使うアットホームな田中優貴の
組み合わせが絶妙。この二人でなければこの映画は成立しなかったかもしれない。
そしてこの映画に対する熱情を溢れさせる宇梶も良い。
画面からこの作品に対する愛が伝わってくるぐらいの気迫を感じる。
その他でも南方英二、南果歩、生瀬勝久といったもっと出演シーンを
増やしたい贅沢な脇役陣が作品をしっかりと支えている。

脚本は上記したように、設定の変換ではかなり健闘していた。
ただ不満もあって、最後の試合までエピソードの繋ぎ方に
ややぶつ切り感があった。エピソードもストーリー性が強いものが少なかったと思う。
これは演出の問題ももちろんあるのだろうけど、やや小ネタにこだわり
過ぎてしまった感じも受けた。月経だとか、南方英二の体操などのネタや、
ダメレスラーの事件を描くのなら、もう少し親子関係の方を
しっかり描いてもよかったのではないかと思う。
キャッチボールや凶器使用後の帰り道だけでは物足りない。
とはいえラストシーンの為の土台をそれなりに積み上げられていたし、
小ネタもしっかり笑えるネタが多く、盛り込むタイミングも上手く、
そうしたセンスはバラエティ畑出身の監督だなと感じさせられた。

ラストシーンに関しては、不器用ながら格好良いマイクパフォーマンス
されて、ぼこぼこにされて、息子が走り、お父さんと叫び、
その姿を見て逆転のバックドロップで勝つ。
息子駆け寄る、やったぞ父ちゃん!見たか息子!
そりゃ泣くって。むしろ負けちゃった方が泣いたかもしれないけど、
娯楽色が強い本作では、これがベストの終わり方だと思った。

kamiki.jpg


これはシネアミューズで頂いてきた小型チラシなんだけど、
もはや神木隆之介が主人公なわけですよ。
これは観た人のほとんどがそう思うはず。
宇梶さんもこの作品にかける意気込みがバンバン伝わってくるし、
とても良い演技をしてるけど、この天賦の才を持つ最強子役の前では
主役を譲らざるをえないのです。

神木隆之介は本当に凄い。とんでもないがきんちょです。
うまい子役というのは「大人が考える小賢しい子供」を
やらされてる感をまといながらも、うまく演じられる子役を指すことが多いですが、
彼はちょっと違う。やらされてる感のない子供らしい自然さをしっかりと
兼ね備えているのです。もっとも大人が作るもんなのだから、結局は
大人の考える子供像であることは否めないのですが、それでもその中に
彼は自然さを盛り込むことが出来ているのです。

「インストール」も上戸ではなく、彼を見に行きます。
平成子役界の至宝が放つそのはかなくまばゆい光。
子役が子役である限り、いつかは失われてしまう
その光が途絶える前に、彼を見に行って欲しい。

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Sunday, September 26, 2004

『スウィングガールズ』(映画館)★★★★

『スウィングガールズ』★★★★

スウィングガールズ スタンダード・エディション

力技を使いすぎだと思う。
やりようによってはもっと良い映画になるとも思う。
商業色の強い映画とも思う。
オレの採点甘過ぎとも思う。
それでも、面白ければ、心地よければいいじゃないか。
見終わった時とっても穏やかな気持ちで充ちていた。
CMやトレイラーで感じさせた期待感を裏切ることはたぶんない。
すべての人間は二種類に分けられる。
それは映画館に行って映画を見る人間と、そうでない人間だ。
映画館でしか得られない興奮と感動は確実に存在する。
スクリーンから直接出てくる音、大画面で一度は楽しんで欲しい。

監督:矢口史靖(ウォーターボーイズひみつの花園アドレナリンドライブ
脚本:矢口史靖
撮影:柴主高秀
キャスト:上野樹里、貫地谷しほり、本仮屋ユイカ、豊島由佳梨、平岡祐太、あすか、中村知世、根本直枝、松田まどか、水田芙美子、関根香菜、辰巳奈都子、中沢なつき、前原絵理、長嶋美紗、あべなぎさ、金崎睦美、竹中直人、白石美帆、小日向文世、渡辺えり子、谷啓、金子莉奈、桜むつ子、眞島秀和、三上真史、福士誠治、高橋一生、田中要次、徳井優、木野花、大倉孝二、西田尚美、菅原大吉、谷本和優、小形雄二、江口のりこ、佐藤二朗、森下能幸、宝井誠明、坂田聡、岩佐真悠子、森康子、林田麻里、武田祐子

 
 
 
 
 
(以下ネタバレあり)
 
 
 
 
 
もうね、女子高生+SWINGJAZZを題材に選んだ時点で、
この映画の成功は決まったようなもんです。
セーラー服でスウィングするんですぜ?
ビジュアル的にめちゃキャッチーじゃないですか。

ラストの発表会のシーン、WB2の吹奏楽部は間に合わなかったけど、
こっちではちゃんと間に合う。本仮屋ユイカが音叉でチューニングをする
ところからスイッチは切り替わり、演奏は静かに「ムーンライトセレナーデ」
からは始まる。そして2曲目に女子校生の勢いが感じられる
「メキシカン・フライヤー@スペースチャンネル5やりてぇー!」がきて、
最後はベタベタだが、そのベタが心地よすぎる「シング・シング・シング」を
ソロパートを交えながらで締めくくる。まさにぬおおおおおおぉ~である。

僕もジャズは結構好きで良く聴く。CDでも聴くけど、
他の音楽と比べるとDVDとか映像付きで聴くことが多い。
ジャズってのは演奏者のパフォーマンスを観ながら聴くと、
特に燃えるジャンルで、汗を垂らしながら演奏するサックスプレイヤー、
尋常じゃないスピードでタッチするピアニスト、躍動感溢れるドラマーなどなど、
ビジュアルパフォーマンス性が非常に高いジャンル。
聴覚と視覚を同時に刺激するからこそ、この映画のラストシーンも凄く響くわけ。
矢口監督もこのことがよくわかっていて、題材としてこれを選択したのだろうけど、
2曲目のメキシカンフライヤーから舞台照明を投入したりと、
演出の方も素晴らしい見せ方だった。

普段はコンボジャズばっか聞いていたんだけど、この映画観て
スウィングジャズもいいなぁと思った。
グレン・ミラーあたりから入門してみるかな。


そんなわけで見終わった時の感触は良好。
でもやっぱ、演奏会までの流れの部分は問題がありそうに感じられる。
練習や努力といった部分の描写は疎かにされているし、
用意された困難も金銭問題と、応募し忘れの凡ミスという
何とも微妙な組み合わせになっているからだ。
普通に考えれば、あそこであんなことやこんなことがあったけど、
最後はついに達成できた!やる気のなかった人間がゼロから始めて、
何かを達成した!という振り幅で観客を落としたほうが、
カタルシスを与えやすいはず。
だからここに疑問を感じるのは、この映画を考えるうえで当然とも言える。

でも、僕は今回はあえてこういう軽いテイストにしたのだと判断した。
特にラストシーンを観てそう思った。
「スウィングガールズ」のラストシーンは、演奏後の音楽を楽しんだという
表情の上野樹里のストップモーションで締めくくられる。
前作「ウォーターボーイズ」は最後にやり遂げた!という表情で
ボーイズ達が退場していくシーンで終わった。
つまり、ガチンコ色が明らかに「スウィングガールズ」の方が減っている。
宣伝では本人達が実際演奏しているということを大いに刷り込んではいるものの、
もしノンフィクション要素をアピールしたいなら、演奏後あったであろう出演者達が
泣きながら抱き合うシーンでも入れればいいはず。
それをしなかったのは、意図的であると考えるのが自然だろう。

「スウィングガールズ」は一見「ウォーターボーイズ」の二番煎じのようで、
実は明確に違うものになるように作られている。
与える感動の質が近すぎると、見終わったときに白けてしまう部分があるのを
監督はちゃんとわかっていたのである。
だからこそ、「ウォーターボーイズ」にはない「スウィングガールズ」だけの感動要素、
音楽の楽しさという部分を大いに強調したかったのではないか。
もちろん音楽の楽しさにプラスしてスポコン要素を入れることも
できたのだろうが、前作との違いを明確にするために、
あえて矢口監督は終始コメディ部分を、強く意識した展開を作り続けたのだろう。
涙が必要なら、雪合戦のシーンなんか絶対にいらない。
音楽の楽しさを軽快に伝えるには、ただ底抜けに可笑しく、楽しければいい。
それを表現するためのベストの媒介が、「田舎の女子校生」だっただけなのである。

この映画を「軽快」ではなく、「軽すぎる」と受けとった人は、無意識的に
「ウォーターボーイズ」的スポコンを期待しすぎていたのだと思う。
スポコンではなく、音楽の楽しさがメインテーマだと思って見直すと、
また違った映画に見えてくるはず。

正直、矢口監督を見直した。商業的なバランスを保ちながら、
やりたいこともしっかり盛り込む技術は賞賛に値すると思う。
今後もサービス業たる娯楽映画を、作り続けて欲しい。
邦画は本当にヒットが見込める娯楽作品が少なすぎるから。


まあ長々書いたけど、当方、上野樹里が見られれば大満足なんで、
実は上記についてはどうでもいいので、適当に読み流してください(遅)
貫地谷しほりも佐藤仁美+平山あやみたいな感じで良かったし、
本仮屋ユイカには全国1000万人の眼鏡っ子好きが感銘を受けたことでしょう。

だいたい矢口監督の笑いやプロットなんていつも強引だし、
ぜってぇ~深読みしすぎだと思うんだよ。
初っぱなから吹奏楽部部長が楽器の中にゲロった時は
またかよ~と思ったけど、全体的には僕の不得手な痛い種類
の笑いもだいぶ減った。個人的にWBは越えた。まあ上野樹里が見られれ(以下略)

<追記>
たぶんまたDVD買っちゃうんだろな。
CSとか深夜に流してるサイドストーリーとかがどうせ特典Discでつくんでしょ。
予約特典でポスターとかつけちゃうんでしょ。全くやってくれるよね・・・
にしても邦画のDVD高すぎ。せめて初回版で5000円以下ぐらいにしてくれ~

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Monday, September 13, 2004

『MIND GAME』(映画館)★★★★

また風邪ひいた。この夏3回目。
ここ最近の目まぐるしい気候の変化、睡眠不足が主な原因。
そしてそこにトドメを刺してくれたのがこの映画。
マジで疲れた(笑)


『MIND GAME(マインド・ゲーム)』★★★★

マインド・ゲーム

2D、3D、実写の融合という斬新な表現手法、
吉本芸人だらけのキャスティング、テーマにしている内容、原作等々と、
サブカルアニメと一言で片づけられかねない見てくれの映画だけど、
扱っているテーマは実は普遍的なものだし、完成度は高い。
とにかくこのスピード感は今まで味わったことがない。
観ているモノをトリップさせる、まさにドラッグムービー。
見終わった時の開放感と脱力感はハンパじゃなかった。
スタジオジブリや、Production I Gといったメジャーどころを
見るのもいいけど、日本のアニメの底力&未来を確認するためにも
こういう作品も見ておいた方がいいと思う。

監督:湯浅政明
脚本:湯浅政明
原作:ロビン西 『マインド・ゲーム
音楽:山本精一
出演:今田耕司、藤井隆、山口智充、中條健一、前田沙耶香、たくませいこ、坂田利夫、島木譲二、西凛太朗


(以下ネタバレあり)


渋谷シネクイントにて観賞。
久々にスペイン坂を登ったよ。
9/11から「スウィングガールズ」になるということだったので、
財政的には映画なんぞ観てる場合じゃなかったんだけど、
監督は「クレヨンしんちゃん」のアニメーター湯浅政明!!
制作は「アニマトリックス」も手掛けたSTUDIO4℃!!!
この強力タッグが新しい手法のアニメをやりたい放題やって作ったらしい!!!
とくれば、これだけはなんとしても見ておかねばと思い、朝一で乗り込んだ。
シネクイントはファーストショーはなんと1000円。えらいぞシネクイント!
朝一といっても11時30分だったし、めちゃ余裕。
客の入りは思ったより多かったけど、3割程度だったかな。
一ヶ月ぶりの劇場観賞だったので、予告編にもかじり付き
ハイテンションな状態で本編に突入。

するとこっちのテンションに呼応するかのごとく、
のっけから2Dと実写の融合で、映画のカラーを強烈に押し出し、
一気にマインドゲームワールドへといざなわれた。
妄想告白→ケツから吹っ飛び昇天→百変化神→神に反逆して突進!
→カーチェイスゥゥゥ!!と瞬発力抜群の演出と展開が続き、
それらの融合がとてつもないスピード感を生み出していた。
頭の芯が痺れまくった。もう最高。

しかしここで一気にスピードが落ち、鯨内部シーンへ。
ここからは映像と音による芸術モードに入る。
実に退廃的で享楽的なシーンが続き、物語性のないだらだらしたシーンが続く。
最後まで見ると、このモダンアートなシーンも必要かなとは思うんだけど、
前半があまりにも凄い速さだし、話の展開も瞬発力勝負。
伏線があってどうのこうのという展開でもなかった為、
この部分は尺的に長すぎたかなと感じられた。
どう考えても恐竜?とのお戯れシーンなんかは必要ないと思ったし。
とはいえセックスシーンとか、バンブーダンス?とかはかなりやばいので、
このパートも見逃せないシーン多数。

鯨内部で十分テンションがダウンしたところで、ラストの鯨脱出シーンと
2連続フラッシュバックシーンに突入。これまた凄い速さ。
クレヨンしんちゃんの大人帝国の階段駆け上がりシーンを
もっと猛烈に濃い濃度で展開。
ここで、過去をフラッシュバックで繋ぎながら、未来をも語ってみせるという
荒技を披露し、脱出後の2連続フラッシュバックではさらに、物語の細部と
ifの世界をもう一個のせるというハンパじゃない情報量で迫ってくる。
もうその映像シャワーが心地よすぎ、読みとるだけでヘトヘトになった。まいった。
おかげで二日寝込みました。まさにドラッグムービー(笑)

映画の内容自体は、くだらない壁ぶっ飛ばして生きようぜ!
どうせ~だし~の世界に生きるより無限の可能性を信じようぜ!
信じて信じて失敗なんか恐れずに突っ込もうぜ!
と底抜けのポジティブをアピールすると同時に、
マインドゲームという妄想、ifの世界であるという面で
ネガティブな要素も持っていると解釈しました。
ラストシーンを見てポジティブに捉えるか、ネガティブに捉えるかは観る人次第。
僕は結局妄想か・・・でも、まあそれでも幸せならいいんじゃないか?
と半分ポジティブに、半分ネガティブに捉えてみました。

表現手法については確かに斬新だけど、その斬新さはこのテーマを底抜けに
ポジティブに表現するためのもので、決して技巧先行の作品だとは思わない。
吉本多用の関西キャスティングも同様の効果があるものだと思うし、
このテーマ、この作品を映像化するにあたって必要な手法だったと考える。
また、ディテールも相当細かいところまでこだわっている。
最後のフラッシュバックのシーンや、散りばめられた小ネタを理解するには
DVD等での観賞が必須。
でもドラッグムービーとして楽しんでもらうために、最初は是非劇場で見て欲しい!
見て欲しい!と力説したかったのだけど、もう東京での公開は終了しました。
うーん残念です。

それにしても宣伝もうちょっとしといてくれよ。
かなり邦画情報集めてる人とかじゃないと、
こんな映画やってることも知らないと思う。
見た目が見た目だけに、アニメオタも一般映画ファンも取り込みにくいしな。
内容自体は実は凄く一般的・・・一般的っぽいもので、
万人向け・・・万人向けっぽいものなんだけどなぁ。


(追記)
吉祥寺バウスシアターで10月にレイトショーやるかもって情報あり。
アニメの可能性を見に行くべし!
もっともバウスシアターのスクリーンは超小さいですが(笑)

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