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Sunday, June 11, 2006

『初恋』★★~映画女優であるということ~

『初恋』★★

Newhatukoib

監督:塙幸成
出演:宮崎あおい、小出恵介、宮崎将、小嶺麗奈、青木崇高、柄本佑、松浦祐也、藤村俊二

今年4本目の宮崎あおい主演映画鑑賞。
そろそろ当たりをひかせてくれても良さそうなものだが、今回も映画の神様は
僕のそんな淡い期待をハンマーで叩き壊していったのだった。

『以下感想文要約』
1.60年代という時代の描き方は及第点。まあそれなりに趣がある。
2.物語としては構造、仕掛けなどが弱い。つまり平坦で退屈するかも。
3.宮崎あおいや、小出君のファンだとか言うなら、まあ観られる映画。
 
 
 
 
 
以下若干のネタバレを含む
 
 
 
 
 

●「初恋」それは60年代後期を舞台にした映画

今回、宮崎あおい映画にしては珍しく、宣伝をやたらとうっている。
GAGAもUSENになってすっかり様変わりしたらしい。
この映画が「初恋」というタイトルに似つかわしくない、3億円事件を
題材にした60年代後期の話で、しかも宮崎あおいが実は
3億円事件の犯人であるというストーリーは皆が知ったうえで
この映画は鑑賞される。

60年代後期は学生運動あり、アメリカに影響を受けたエキセントリックな
風俗ありで、若者を描く題材としては、実に映画的に画になるものであり、
これをとって画的によろしくないなんてことは・・・まずないだろう。
まったりとした学生生活で、これといった刺激もない今の世代から観ると、
興味深い話も多いだろうし、お話としてもいかようにも魅力的に作れるはずだろう。

実際に映画の中に出てくる風俗やら学生運動は、それなりに趣がある
ものに仕上がっているし、60年代を描きましたという観点からは
及第点であったと思う。もちろんこれは「初恋」の映画なので、
60年代はこの映画に関しては核ではない。舞台装置である。

●そう、これは「初恋」の映画だった

だが気づくと、60年代のニヒリズムいっぱいの若者たちと、
なんとか孤独から脱したい少女のゆるい物語を眺めて、長い時間が経っていた。
そう、そういえばこれって「初恋」の映画だったよな?

Bでの出会いのシーンや、補導されそうになるシーンなどで、
一応の伏線みたいなものはあるにはあるのだが、核部分の話が
あまりに平坦に進んでいき、それとはまったくリンクしないところで
Bの仲間達の話がでてきて、これまたそれとはあまりリンクしないところで
三億円事件の話が進行し、核であるはずの「初恋」はどんどんぼやけて
いってしまう。

最大の原因は、みすず、岸のバックグラウンドの描き方が甘すぎたこと。
アニキの亮とかのバックグラウンド描く余裕があるなら、もっと二人の
バックグラウンドを突っ込んで描くべきだろう。特にみすずに関しては
家庭や学校での孤立はそれなりに伝わってきたが、何故そのあとの
Bの仲間との交流をもう少し描かないのか?そうした部分の描き方が
凄く下手であるがために、終結部分でのギャップが小さくなるから、
物語としての面白みがない。

●そういえばこれは3億円事件の映画でもあった

そうそう、これは女子高生が実は3億円事件の犯人だった
という突飛な設定の映画でもあった。
事件の顛末はここに書くことはしないが、こちらは映画的には
凄くちゃっちい。だが、そこが確かにフィクションっぽくないともいえなくもないし、
「初恋」に突き動かされたという動機もそれなりに納得できる部分がある。
とはいえ、あまりにも間延びした描き方をしているので、緊迫感がなく
せっかくの題材をふいにしてしまっている印象が大きかった。
事件内容はある程度皆が知って観ているし、確かにクライムサスペンス
じゃないのだが、映画全体にあまりにメリハリがなかったので、
せめてここで付けてあげればいいのにと思ってしまった。

●「初恋」~宮崎あおいという映画女優~

いろんな題材を薄くして貼り合わせたような映画だった。
そして、映画として押さえるべきツボを押さえていない。
特に映画として終結部の出来がよろしくないのは致命的。
みすずがランボーの詩集の文を見つけるシーンで、今までの空気を
ぶち壊すような音楽を大きく流すのも興ざめだし、ラストにそれぞれの
その後をああいう形で出す必要性もまるでない。
最後まで題材ごとのバランスと融合がうまくいかない作品だった。
画自体は悪くなかったし、流行の情動をわかりやすく表現する純愛映画には
なっていなかっただけに、もったいなかった。

とまあここまで感想を書いたところで、今年の宮崎あおいの映画の
批判の中心にある部分があまりに似通っていることに気づく。
どれもこれも脚本がどーにもこーにもつまらないのだ。
(いや別に今年に限ったことじゃないだろとか言わないように・・・)

確かに宮崎あおいという女優は今や日本映画の看板女優である。
画面に出ているだけで、それなりの空気感を作り、映画っぽくしてくれる。
そういった才能を持った女優はそうそういるものではない。
しかしそうであるが故に、宮崎あおいを起用する映画というのは、
映画っぽい映画を狙ったスカした映画が多い気がする。
悪く言うなら旧態依然とした中身のない日本映画になっていて、
結果として、宮崎あおいのイメージビデオみたいとか言われる映画が
量産されている。

ただ他にも日本映画を彩る映画女優はたくさんいるし、他の映画女優には
それなりの映画がきて、宮崎あおいにこないのは何故なのか?
思い当たる差異は、宮崎あおいが少女っぽさと、透明感のある暗さをウリ
にしている点ぐらいしか思いつかない。そのウリが役どころを狭め、
このような状況になっているとするなら不幸としか言いようがない。

とはいえ宮崎あおいも20歳になり、そろそろ役の幅を考えて行かなくては
ならないだろう。ハチ役も一見新境地のようでもあったが、「パコダテ人」の
流れを汲んだものと言えなくもないので、まだまだ違う役どころを開拓して
いかなくてはならないし、そうすることで、いい加減良い映画に巡り会える
かもしれない。
僕としては、宮崎あおいの自然な役作りを最大限に活かした映画が
観てみたいので、テイストとしては「好きだ、」のような映画で、
なおかつ中身がしっかりしているものを期待している。
だから、別に役の幅なんてそんなに広げなくいいと思っているのだが、
そんな映画は良質な映画はそもそも年に1,2本世に出れば良い方で、
待つのには忍耐、あたるのには運、さらに映画女優であり続けることも必要である。
その道のりは果てしなく遠い・・・

「ギミーヘブン」「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」「好きだ、」「初恋」と4本が終わり、
宮崎あおいのビッグイヤーもあとは「ただ、君を愛してる」を残すのみ。
最後の一本ぐらいはなんとかして欲しいものだし、今年唯一のメジャー系映画である。
ただよりによって何故東映というメジャーを選んじゃうかな。東宝にしとけばいいのに・・・

当初は5本の中で一番期待していない映画だったが、いよいよこんなベタベタの
純愛映画が意外といけるんじゃないかなどと、思ってみたり・・・
これだけは、マーケットに求められる宮崎あおい像から作る映画ではなく、
純愛映画ブームというマーケットから作られる映画だし。
映画の神様にそう問いかけてみるんだけど、神様は純愛ブームってまだあるの?
とか言ってきそうな予感でいっぱいである。
とりあえずは10月28日まで、しばしのおやすみ。

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