Sunday, November 19, 2006

第19回東京国際映画祭【四日目】 『7月24日通りのクリスマス』→『世界はときどき美しい』

Tiff1024
こういうセンスも必要なんですかね・・・
まあ三日目から何日後に更新してるんだって話ですが、四日目です。

■『7月24日通りのクリスマス』(特別招待作品)★★☆
オフィシャルHP
11月3日公開
724christmas
「電車男」チームが送る、クリスマスロマンティックラブコメディー。
テレビ朝日のこの冬の勝負作品。 

 
 
<以下ネタバレ>
 
 
 
 
 
●正当派ラブコメ
日本では意外と稀少な美男美女による正当派ラブコメ。
正当派ラブコメとか書くと、日本ではどうも”萌え”色が強いが、
ここでいう正当派ラブコメってのはアメリカンなラブコメを指す。
ロマンティックラブコメとでもいうべきだろうか。
「ノッティングヒルの恋人」みたいな感じのね(観たことないけど)

ただ、やはりアメリカほどやり慣れていない。
やり慣れないというよりは、日本人には向いてないのかも。
いくら美男美女でも、そこはリアルな存在の日本人だから、
別世界として処理できない。そうなってくると観てる方も
居心地が悪くなる。結果、世界を変える為に、コメ色が強くなる。

最近じゃ「電車男」が最たる例だけど、バーチャルな
ぶっ飛んだ設定で、そもそも現実からできるだけ離してしまう
のが手っ取り早い。マンガ原作で実写化するものも多く、
要するにリアルさが入りすぎると、”そういうものだ”
という心構えで観られなくなってしまうのだ。

宣伝は「電車男」チームが、男女の立場を入れ替えたものを
製作したように見えたけど、内容は「電車男」と違ってかなりの
正当派を目指していたし、中谷美紀がいくらぼさぼさになって、
負け組っぽい感じにしたって、そりゃ中谷美紀は中谷美紀なのである。
さらに「電車男」チームなので、現実から乖離する手段として、
コメディを使ってしまい、結果的に中途半端に逃げてしまった。
出来上がったのは、中途半端な出来のラブストーリーというわけ。

まだまだ日本映画でこのジャンルをやり遂げるのはかなり困難。
今後もこういうロマンティックラブストーリーに挑戦し続け、
興行的にも成功が続けば、日本映画の隆盛も一時のモノではないと
断言できるでしょう。

とここまでは観た翌日に書いていて、本日までの実際の興行収入観ると、
やはりコケ気味。まだ邦画に求められている役割ではなかったか。
韓流とか洋画のように、どこか違う世界で起こっているからこそ、
この手のラブストーリーは許されるのでしょう。


■『世界はときどき美しい』(ワールドプレミア・日本映画ある視点部門)★★★
オフィシャルHP
2007年春公開予定

2003年に東京国際ファンタスティック映画祭に12分作品として
「世界はときどき美しい」を出品している。本作はそれにさらに4つの短編映像詩
を加え、再編集をし、映画化したもの。
御法川監督は、長い助監督の経験があり、近年はミュージッククリップや
ドキュメンタリー監督として活躍。本作が映画デビュー作。
 
 
 

 
<以下ある程度のネタバレ>
 
 
 
 
 

●全編8mm映画、こだわりの初監督作品

スクリーンから伝わってきたのは、監督の映画への情熱の塊だった。
5つの映像詩はどれも個性的な役者を起用し、それぞれの役者の
色を活かしながら構成された5つのストーリーは、人生の一幕を
切り取っていて、好感が持てる映像作りだった。
全編が非常に丁寧に撮影されている印象で、8mmで撮影されている
点も監督のこだわりが感じられた。

●映画祭らしい作品チョイスとは

観ていて面白いとかそういう種類の映画ではない。
だからこそ、こういう映画祭でしっかり取り上げてあげるべき。
「日本映画ある視点部門」の役割は、日本映画を発展させるため
にある。それなのに、今年の東京国際映画祭は「日本映画ある
視点部門」でさえも、公開が年内に迫っている作品が多く、
まるで映画宣伝用の映画祭の様相を呈していた。
それは違うでしょうよと。来年は作品チョイスを考え直して欲しい。

●今年もティーチインにロッケンロール内田登場

去年の「ゲルマニウムの夜」の時も鑑賞していた内田裕也が
今年もやってきていた。相変わらずどこにいても目立つw
ティーチインでは原将人監督(あの「20世紀ノスタルジア」で有名な)も
何故かいて、8mmに対する熱い思いを語りまくった。

ちなみに知ってる方も多いでしょうが「20世紀ノスタルジア」は結果的に
アイドル映画みたいな扱いをされただけで、撮影はヒロスエブレイク前だし、
原将人もいつも通り映画を作っただけ。
(あの頃の)ヒロスエの魅力にいち早く察知し、それをひたすら撮りまくった
という意味だけで、原将人監督はボクの中では偉大である。
8mmの味わいは「虹の女神」でも有効に活用されていた。
フジフイルムから生産終了が先頃発表されたが、映画関係者が反対の声
をあげるのもわかる。

そして、ティーチインの締めはやっぱり内田裕也。
新人監督に「映画界の悪い色に染まらず、素直に伸びて下さい。ロックンロール」
といって去っていきました。

映画祭5日目の予定は『松ヶ根乱射事件』→『アジアンタムブルー』→
『日本の自転車泥棒』。

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Sunday, October 29, 2006

第19回東京国際映画祭【三日目】 『虹の女神』→『長州ファイブ』

Tiff1023

三日目です。
平日となり六本木ヒルズも閑散としてきました。天候は引き続き悪い。
一年ぶりにヒルズへきてるわけですが、去年あったテナントが結構
消えてる。人通りも去年より少ない気がするし。
生き残ってる店のタイプを観ると、やっぱりここはビジネスをする場所
であって、観光地とかじゃないんだろなと感じます。
おかげで、こちらとしては過ごしやすくなって嬉しい限りですが、
最近いろいろな複合施設が乱立している状況を考えると、
他のところがどうなってしまうのかが心配です。そういうところは
だいたいシネコンも抱えているからね。六ヒルもそうだけど、
最近の複合施設はわざとだとは思うけど、構造が複雑すぎるよ。
脱線したところで、3日目感想。


■『虹の女神-Rainbow song-』(特別招待作品)★★★☆
オフィシャルHP
10月28日公開
Nijinomegami
岩井俊二初プロデュース作品。
舞台挨拶でも熊澤監督(「ニライカナイからの手紙」「親指さがし」)より優遇され、
いつも通り見た目気持ち悪い(と隣の人は言っていたw)岩井俊二。
監督からプロデュースにまわったことで、映画制作全体を冷静に見渡すことが
できたとの話があり、さてその成果やいかに?
 
 
 
 
 
<以下珍しく結構ネタバレあり、もう公開になっちゃったし>
 
 
 
 
 
●岩井監督プロデュース効果

岩井監督がプロデュースにまわったことによる効果は、
岩井色が弱くなって、一般ウケするところに落ちてるとこ。
岩井映画は一般人にはストーリーや画作りがわかりづらかったり
したわけですが、それがオーソドックスな作りをする熊澤監督に
投げられたことで、かなり普通っぽくなっている。そういう意味では
過去最高に人に薦めやすい岩井作品に仕上がってます。
逆にいえば、岩井作品特有のクセはかなり減っているので、
岩井ファンにはやや物足りないかもしれません。
まあ、ここにも日本映画商業化の波が押し寄せてきてるのやも。
岩井映画なんかより、わかりづらい日本映画なんて
死ぬほどあるんですけどね・・・

とりあえずバランスの良い青春映画に仕上がった。
素直に受け止めればそういうことになると思います。

●しかしそこはどこまで行ってもやっぱ岩井映画

岩井俊二といえば幻想的少女映画。
今回も色は薄まったとはいえ、そこは外しません。
流行にしっかりと乗ったのか”ツンデレ”を搭載。
そして男はやっぱりダメダメで、女は”ダメ男好き”という
これまた流行にのってますw
気になって原作を読んでみたんですが、やっぱり原作の
男はもうちょい賢いし、ここまでツンデレじゃなかったw
岩井監督は相変わらず男性が好む女性を描くのがお好きな
ようです。
途中でよくよく考えるとあまり本筋と関係ないエピソードや
設定が入ってくるのも、岩井俊二らしい作風でした。

●キャスティングの妙

市原隼人、蒼井優など岩井常連組が多い中、岩井組と
関係があまりなく、今回主演を任されたのが上野樹里。
上野樹里はやはり幅が広い。今回映画祭で「7月24日
通りのクリスマス」でも観たのだけど、他に上野樹里以上に
はまりそうな女優がどちらもすぐには思いつかなかった。
純粋なラブストーリー以外なら大抵他の女優を寄せ付けな
そうだから、当面上野樹里は引っ張りだこ状態が続きそうな
予感がした一作でした。

●まとめ

青春映画バカとしては、大学生活の描き方、ラストシーンの
切なさ、ところどころに入るエピソードなどなど、オススメしたい一作です。
多少商業色は増したとはいえ、ここには商業TV映画じゃない”映画”があります。

 
 
■『長州ファイブ』(ワールドプレミア・日本映画ある視点部門)★★☆
オフィシャルサイト
2007年1月下旬公開予定
Tyoushufive

「アダン」「地雷を踏んだらサヨウナラ」などドキュメンタリー色の強い
映画で五十嵐匠監督作品。
 
 
 
 
 
<以下ネタバレあり>
 
 
 
 
 
●排除しきれぬドキュメンタリー色

山尾庸三を主演においた理由は一番資料が少なくて、脚色しやすかったから
と監督はティーチインで発言していた。
確かにストーリーは途中から、長州ファイブの話から山尾庸三の話へとシフト
していくのだけど、脚色していったわりには、歴史ドキュメンタリー色が強く
残ってしまっており、盲学校設立のキッカケとなったエピソードなどはもう少し
感情的ばものを強調したストーリー作りにしても良かったのかもしれない。
幕末モノは武勇伝的エピソードが満載でいちいち入れたくなってしまうし、
それを入れすぎると時間がなくなるし、入れないと違和感があるしと
本当に難しいジャンルであることを再認識させられた映画だった。

●若手男優の駒不足?

本作の主演は松田龍平。日本映画を観るモノとしてはまたか・・・
という印象は大きい。女優陣に比べ、男優陣の層は薄い印象はぬぐえない。
本作も北村有起哉、三浦アキフミなど次代の名脇役を予感させる役者はいるものの、
女優でいえば多部未華子のようなタイプの男優がなかなか出てこない。
役者がいないからそういう映画が作れないのか、そういう映画を作らないから
役者が出てこないのか。どちらにせよ、日本映画の可能性を広げるには
若手男優の新星の出現は必須要件であるように思う。
柳楽優弥が「シュガー&スパイス」みたいな作品に担ぎ上げられるのだから、
事態は結構深刻な気がしているのは僕だけ?

■三日目雑感

途中、ユナイテッドシネマ豊洲へ「いちばんきれいな水」を観るため遠征しました。
初のユナイテッド系だったんですが、上品な劇場作りで好感が持てました。
ただ、プレミアカップルシートがまるで玉座のごとく配置されていて、
あそこでいちゃいちゃしながら映画を観ることが出来るのは、かなりの強者
だと思われます。チャレンジしたい方は是非ユナイテッドシネマ豊洲へどうぞ。
「いちばんきれいな水」はコンセプトのしっかりしたノーマルな映画でした。
しかし、加藤ローサは今年出過ぎだね。

映画祭も3日が経ち、3日で9本鑑賞で流石に疲労がでてきましたw
やはりティーチイン付きとか、終わったあとも監督に話しかけて話を聞きやすい
とか、いつもは解消されない映画への疑問が解決される点は良いです。
4日目は『7月24日通りのクリスマス』→『世界はときどき美しい』の予定です。

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Wednesday, October 25, 2006

第19回東京国際映画祭【二日目】 『壁男』→『魂萌え!』→『長い散歩』

Tiff1022

東京国際映画祭二日目。Bunkamuraに進出です。
二日目にして、早速天気が崩れてくれました。
去年もヒルズは寒かった・・・
二日目のラインアップは「壁男」→「魂萌え」→「長い散歩」と
普段から考えると、え~?っという作品チョイスです。

TIFFは僕にとっては普段見ない作品を見る良い機会だと思ってます。
普段はどうしても自分から作品を選んでみるから、チョイスに偏りが
出てしまう。それを埋めてくれるひとつがTIFFだったりします。
去年はそれが実にハマってくれて、「雪に願うこと」「ゲルマニウムの夜」
「カミュなんて知らない」など普段あまり接しないタイプの作品で、
興味深い作品を数多く観ることができました。今回もそんな作品に
出会えることを期待してます。


 
 
 
■『壁男』(ワールドプレミア・日本映画ある視点部門)★★
オフィシャルブログ?
2007年秋公開予定
Kabeotoko

普段僕がほぼ手を出さない諸星大二郎原作のホラー系映画。
未だ「着信アリ」すらお蔵入りしていて、今年勢いで観てしまった「サイレン」
ぐらいしか観てない僕にとってはかなりの冒険です。
しかも朝一発目からw
 
 
 
 
 
<以下ネタバレあり>
 
 
 
 
 
●諸星大二郎原作映画として

諸星大二郎原作映画というと、「奇談」が記憶に新しい。
あちらは諸星ワールドを出来るだけフィルムに落とし込もうという
諸星リスペクト溢れる作品だったけど、こちらはあくまで諸星作品は
ネタ元であり、そこから監督の感性で世界観を構築した雰囲気の
映画でした。
簡単にいうと諸星作品特有のべたつき感はなかったですw
監督のティーチインによると、場所も極寒期の北海道にしちゃったりと、
かなりの改編をしてたみたいで、それは諸星先生もどんどん変えて
欲しいと希望しているらしい。その辺が諸星作品特有のべたつきを
抑えた要因なのかもしれない。おかげで若干一般ウケする出来に
なってます。

でも、やっぱりそれでも隠しきれない諸星色はあり。
作品全体から漂うホラーというよりは、人間の怖さみたいなところが
にじみでているあたりは、いかにも諸星作品っぽい。

●ホラー?ファンタジー?

近年はジャパニーズホラーなんてジャンルが確立されちゃうぐらい
1つの定番ジャンルにのし上がったわけですが、この作品に関しては
ジャパニーズホラーらしさはそこまで強調されてはいない。
静かな恐怖はあるにはあるけど、それもどちらかというと人間の
怖さの方に主眼が置かれている。
「壁」を観念的に捉え、そこから人間の表と裏を透かし見ようと
いう切り口で、現代を観ていくというのは、ブラックなファンタジー
っぽい部分がむしろ強い気がした。

映画全体としては、特徴が捉えづらく、万人にわかりやすい作品
とは言い難い内容でした。わかりにくい=良くない映画ということ
はもちろんないですが、錯乱と狂気をもう少し強調して、煽っても
よかったのかなと思います。


■『魂萌え!』(ワールドプレミア・コンペティション部門)★★★☆
オフィシャルサイト
2007年1月下旬
Tamamoe

これまた明らかに僕は対象外のマーケティングの元に制作された
っぽい映画。当然のごとく、鑑賞にきている年齢層は僕より二回り
以上は高く、女性ばかりでした。
 
 
 
 
 
<以下ネタバレ>
 
 
 
 
 
●「魂萌え」→英題「awaking」

魂萌えは原作桐野夏生自身の造語。そして、英訳は”awaking”。
見終わった時、”魂萌え”はそんなにしっくりこなかったけど、
”awaking”はわかりやすく、しっくりくるものだった。
取り残されるものが如何にして良い方へと変体するか
を見事に描ききっていた。
プロデューサーによると「あくまでも監督が作って、それを持ち込まれたもので
あって、2007年問題とかの時代性を考えて、発案したわけでもなんでも
ない」とのことだったが、これは時代にもマッチしているし、最近観た
年齢高めターゲットの映画の中では、娯楽性も高く、非常によくまとまって
ました。「明日の記憶」のようなハードな路線でもなく、普通に今求められている
風潮が反映されている題材なので、これはうまいことやればヒットするかも
しれない。主演の風吹ジュンも流石だった。

●プロデューサーの憂鬱

日本の映画のプロデューサーは一握りのスーパーな御方を除いて、
ほとんどの人がプロダクトアウトに苦しめられているようだ。
映画の作家性の高さを考えると、それはただしい傾向だとは思う。
しかし、もうできちゃってるもんをそれなりに流行らせるにはどうしたら良いのか?
なんてのは実に悩ましいことだ。
もっともマーケットインなんかして作っていても、最近は日本映画のサイクルもとても
早く、TV局主導映画は、TVドラマとのバランスも取りながら、とにかく売れそうな奴
を片っ端から量産する・・・いってみるなら90年代のTVドラマみたいな状況に
どんどん近づいて行っている。
今はミニシアター系と大作のバランスがそこそこ取れているけど、これだけTV
のようなサイクルでまわしているんじゃ、それもいずれ破綻しそうで怖い。
連載が終わってない人気マンガ・小説のハンティングとかがますます増えそうだし、
作品の品質も去年と比べると、大作は特に怪しい。
 
 
 

■『長い散歩』(ジャパンプレミア・日本映画ある視点部門)★★★☆
オフィシャルサイト
2006年12月下旬
Nagaisanpo


「少女」「るにん」に続く、奥田瑛二監督作品第3弾。
最近特に精力的に制作しているらしく、舞台挨拶にも次回作の
「風の外側」を制作中であるため、監督は姿を見せなかった。 
モントリオール映画祭三冠作品。 
 
 
 
<以下ネタバレ>
 
 
 
 
 
●奥田監督の過去作とは一線を画す内容。

奥田映画というと、一般受けしない題材で、下手すると奥田監督の
自慰行為で終わっちゃってると捉えられかねない映画をイメージ
してしまうのだが、この第3作は、そうした感じはほとんど感じられない。
実にオーソドックスな良いロードムービーに仕上がっている。
奥田作品だからクセが強そうと今まで敬遠していた人には、
是非観てもらいたい。
舞台挨拶に監督の妻であり、脚本も担当した安藤和津さんがきていて、
家族でこの映画を作ったというコメントがあった。上映終了後も
観客に出口で挨拶をしてまわるこの奥さんあってこそ、奥田瑛二は
コントロール出来る存在となりうるのだなあと。
一人の奇才を一般人にわかるレベルに落とし込むには、やはり
こういうバランスというものが重要なのでしょう。


■二日目雑感

二日目の三本には概ね満足しました。特に『魂萌え!』『長い散歩』は
拾い物で、TIFFじゃないと観なかっただろうという意味では、
昨日の『パプリカ』を越える満足度がありました。

やや不満があるとすれば、今年は小粒な作品が多く、しかも公開時期が
直近に迫っているものがかなりあること。
映画祭というよりはただの試金石的役割、宣伝材料になってしまっている
感が強い。
また、去年より外国人のお客さんが少ない気がする。仮にも国際映画祭なの
だから、本分を忘れないで欲しいものです。

明日は岩井監督プロデュースの『虹の女神』→『長州ファイブ』
途中出来たばかりの豊洲のユナイテッドシネマに遠征予定。

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Sunday, October 22, 2006

第19回東京国際映画祭【初日】 『パプリカ』

Tiff1021

今年も東京国際映画祭の季節がやってきました。
去年も実は13本も観に行っていたんですが、全くレポートもせず、
いったいこのブログは何ブログ?状態だったんですが、
今年は真面目に感想をたらたらと書きます。

今年は去年はなかったオープニングイブ「武士の一分(ワールドプレミア)」
があり、いければ行きたかったんですが、オークション観たらウン万円にも
なっていて手が出ず。13年連続好きな男は伊達じゃない!らしいです。

というわけで本日が実質スタートってことで、
初日のレポートです。

■『パプリカ』(ジャパンプレミア・animecsTIFF2006オープニング作品)★★★★
オフィシャルHP
11/25公開予定
Papurika

毎年パワーアップしていっている感があるアニメクスTIFF部門のオープニング作品。
「千年女優」「東京ゴッドファーザーズ」などの映画や、TVシリーズの「妄想代理人」など
で知られる今敏監督作品。
先頃ヴェネチアに出品されて、意外と良い線までいっていたとの評判だったので、
かなり期待度は高かったです。
 
 
 
 
 

<以下ネタバレはない方向ではありますが、要注意>
 
 
 
 
 
●独特の浮遊感と疾走感で押し切られる90分

「東京ゴッドファーザーズ」がよくまとまった佳作だったので、
この題材でも結構良い線まで持って行ってくれるだろうとは
思っていたのだけど、期待以上の出来でした。
今監督は、他の有名なアニメ監督ほどディテールにこだわるタイプ
ではないと思うけど、その分、全体のバランス感覚は高いと思う。
本作においても、ともすれば大決壊を起こしそうな終結部分を、
ストーリーを二重にしておくことで、すんなり受け入れられるものに
仕上げているし、90分でこれだけ内容を詰め込んでいて、破綻して
いないのは素晴らしい。

シリアスと笑いの併用も絶妙で、舞台挨拶で監督が宣言していた
”癒し映画”というジャンル付けは、意外と的を射た表現だった。
声優も古谷徹、林原めぐみ・山ちゃんとオールスター級で安心して観られるし、
隙は見あたらない。
マッドハウスの画作りは好き嫌いが分かれると思うけど、過去のマッドハウス
作品の中では一番無難なタッチで描かれていたと思うので、画で毛嫌い
していた人には是非観てもらいたいです。

●アニメ映画の打率の高さ

筒井原作の2本のアニメで、それはどっちも結構な当たりという
凄いアニメ当たり年になってしまいそうです。
もっとも「時かけ~」は原作とはかなり違う設定だし、「パプリカ」もあの分厚い
原作を圧縮し、独自解釈したものなので、アニメ映画の出来が良いことと
原作選びが良かったというのはリンクしないとは思います。

アニメ映画は、実写のモノに比べて、脚本力が全体的に高い。
長期のスパンで制作しているという部分と、実写に比べると自由度が
格段に高いことなどが要因か。あとは商業色を気にしなくてもいい点。
世間が眉をひそめるアニメオタという土壌こそが、こうした環境を育んで
いたりするのやもしれないと考えると、奥深さを感じません?w
あとは、いろいろ細部を調整したり、大枠を作りやすいとか、
そういう製作方法が日本人にそもそもあっていることもあるだろうし、
実写でSFやると、予算もノウハウも不足してるから、画作りができない
というのも原因かもしれない。
とりあえず「パプリカ」を見る限りでは、日本のSFアニメは今後も
幅を利かせる予感はたっぷりでした。
 
 
 
 
 
<ネタバレ要注意ここまでぐらい>
 
 
 
 
 
■映画祭初日雑感

とりあえず映画祭の初日は一本だけ。
「パプリカ」のあとに有楽町で「地下鉄に乗って」「涙そうそう」も
観たんですけど、どちらもとんでもない地雷でしたw

二日目の予定は
『壁男』→『魂萌え!』→『長い散歩』
と渋すぎるチョイスで過ごす予定。

映画祭はやっぱり独特の雰囲気があって良いです。
「パプリカ」も舞台挨拶があり、監督、筒井氏、古谷氏などがきていたけど、
観客があんなに静かに待ってる舞台挨拶を待ってるのも映画祭だけかもしれない。
当然英語通訳も入るし、ピリッとして、とてもお上品な時を過ごせます。
何より六本木だしね・・・
明日はティーチインのある映画もあるので、チャンスがあれば質問する予定。

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Sunday, June 11, 2006

『初恋』★★~映画女優であるということ~

『初恋』★★

Newhatukoib

監督:塙幸成
出演:宮崎あおい、小出恵介、宮崎将、小嶺麗奈、青木崇高、柄本佑、松浦祐也、藤村俊二

今年4本目の宮崎あおい主演映画鑑賞。
そろそろ当たりをひかせてくれても良さそうなものだが、今回も映画の神様は
僕のそんな淡い期待をハンマーで叩き壊していったのだった。

『以下感想文要約』
1.60年代という時代の描き方は及第点。まあそれなりに趣がある。
2.物語としては構造、仕掛けなどが弱い。つまり平坦で退屈するかも。
3.宮崎あおいや、小出君のファンだとか言うなら、まあ観られる映画。
 
 
 
 
 
以下若干のネタバレを含む
 
 
 
 
 

●「初恋」それは60年代後期を舞台にした映画

今回、宮崎あおい映画にしては珍しく、宣伝をやたらとうっている。
GAGAもUSENになってすっかり様変わりしたらしい。
この映画が「初恋」というタイトルに似つかわしくない、3億円事件を
題材にした60年代後期の話で、しかも宮崎あおいが実は
3億円事件の犯人であるというストーリーは皆が知ったうえで
この映画は鑑賞される。

60年代後期は学生運動あり、アメリカに影響を受けたエキセントリックな
風俗ありで、若者を描く題材としては、実に映画的に画になるものであり、
これをとって画的によろしくないなんてことは・・・まずないだろう。
まったりとした学生生活で、これといった刺激もない今の世代から観ると、
興味深い話も多いだろうし、お話としてもいかようにも魅力的に作れるはずだろう。

実際に映画の中に出てくる風俗やら学生運動は、それなりに趣がある
ものに仕上がっているし、60年代を描きましたという観点からは
及第点であったと思う。もちろんこれは「初恋」の映画なので、
60年代はこの映画に関しては核ではない。舞台装置である。

●そう、これは「初恋」の映画だった

だが気づくと、60年代のニヒリズムいっぱいの若者たちと、
なんとか孤独から脱したい少女のゆるい物語を眺めて、長い時間が経っていた。
そう、そういえばこれって「初恋」の映画だったよな?

Bでの出会いのシーンや、補導されそうになるシーンなどで、
一応の伏線みたいなものはあるにはあるのだが、核部分の話が
あまりに平坦に進んでいき、それとはまったくリンクしないところで
Bの仲間達の話がでてきて、これまたそれとはあまりリンクしないところで
三億円事件の話が進行し、核であるはずの「初恋」はどんどんぼやけて
いってしまう。

最大の原因は、みすず、岸のバックグラウンドの描き方が甘すぎたこと。
アニキの亮とかのバックグラウンド描く余裕があるなら、もっと二人の
バックグラウンドを突っ込んで描くべきだろう。特にみすずに関しては
家庭や学校での孤立はそれなりに伝わってきたが、何故そのあとの
Bの仲間との交流をもう少し描かないのか?そうした部分の描き方が
凄く下手であるがために、終結部分でのギャップが小さくなるから、
物語としての面白みがない。

●そういえばこれは3億円事件の映画でもあった

そうそう、これは女子高生が実は3億円事件の犯人だった
という突飛な設定の映画でもあった。
事件の顛末はここに書くことはしないが、こちらは映画的には
凄くちゃっちい。だが、そこが確かにフィクションっぽくないともいえなくもないし、
「初恋」に突き動かされたという動機もそれなりに納得できる部分がある。
とはいえ、あまりにも間延びした描き方をしているので、緊迫感がなく
せっかくの題材をふいにしてしまっている印象が大きかった。
事件内容はある程度皆が知って観ているし、確かにクライムサスペンス
じゃないのだが、映画全体にあまりにメリハリがなかったので、
せめてここで付けてあげればいいのにと思ってしまった。

●「初恋」~宮崎あおいという映画女優~

いろんな題材を薄くして貼り合わせたような映画だった。
そして、映画として押さえるべきツボを押さえていない。
特に映画として終結部の出来がよろしくないのは致命的。
みすずがランボーの詩集の文を見つけるシーンで、今までの空気を
ぶち壊すような音楽を大きく流すのも興ざめだし、ラストにそれぞれの
その後をああいう形で出す必要性もまるでない。
最後まで題材ごとのバランスと融合がうまくいかない作品だった。
画自体は悪くなかったし、流行の情動をわかりやすく表現する純愛映画には
なっていなかっただけに、もったいなかった。

とまあここまで感想を書いたところで、今年の宮崎あおいの映画の
批判の中心にある部分があまりに似通っていることに気づく。
どれもこれも脚本がどーにもこーにもつまらないのだ。
(いや別に今年に限ったことじゃないだろとか言わないように・・・)

確かに宮崎あおいという女優は今や日本映画の看板女優である。
画面に出ているだけで、それなりの空気感を作り、映画っぽくしてくれる。
そういった才能を持った女優はそうそういるものではない。
しかしそうであるが故に、宮崎あおいを起用する映画というのは、
映画っぽい映画を狙ったスカした映画が多い気がする。
悪く言うなら旧態依然とした中身のない日本映画になっていて、
結果として、宮崎あおいのイメージビデオみたいとか言われる映画が
量産されている。

ただ他にも日本映画を彩る映画女優はたくさんいるし、他の映画女優には
それなりの映画がきて、宮崎あおいにこないのは何故なのか?
思い当たる差異は、宮崎あおいが少女っぽさと、透明感のある暗さをウリ
にしている点ぐらいしか思いつかない。そのウリが役どころを狭め、
このような状況になっているとするなら不幸としか言いようがない。

とはいえ宮崎あおいも20歳になり、そろそろ役の幅を考えて行かなくては
ならないだろう。ハチ役も一見新境地のようでもあったが、「パコダテ人」の
流れを汲んだものと言えなくもないので、まだまだ違う役どころを開拓して
いかなくてはならないし、そうすることで、いい加減良い映画に巡り会える
かもしれない。
僕としては、宮崎あおいの自然な役作りを最大限に活かした映画が
観てみたいので、テイストとしては「好きだ、」のような映画で、
なおかつ中身がしっかりしているものを期待している。
だから、別に役の幅なんてそんなに広げなくいいと思っているのだが、
そんな映画は良質な映画はそもそも年に1,2本世に出れば良い方で、
待つのには忍耐、あたるのには運、さらに映画女優であり続けることも必要である。
その道のりは果てしなく遠い・・・

「ギミーヘブン」「エリ・エリ・レマ・サバクタニ」「好きだ、」「初恋」と4本が終わり、
宮崎あおいのビッグイヤーもあとは「ただ、君を愛してる」を残すのみ。
最後の一本ぐらいはなんとかして欲しいものだし、今年唯一のメジャー系映画である。
ただよりによって何故東映というメジャーを選んじゃうかな。東宝にしとけばいいのに・・・

当初は5本の中で一番期待していない映画だったが、いよいよこんなベタベタの
純愛映画が意外といけるんじゃないかなどと、思ってみたり・・・
これだけは、マーケットに求められる宮崎あおい像から作る映画ではなく、
純愛映画ブームというマーケットから作られる映画だし。
映画の神様にそう問いかけてみるんだけど、神様は純愛ブームってまだあるの?
とか言ってきそうな予感でいっぱいである。
とりあえずは10月28日まで、しばしのおやすみ。

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